いびきと睡眠時無呼吸症候群について

内科 大城 元  

 日本人に対する最近の調査によれば、常習性いびきの割合は、男性の21%、女性の6.1%に及び、年代別では、男女ともに50歳代にピークがあります。そのうち日中、だるい、眠いなどの症状をともなう睡眠時無呼吸症候群は成人の5%といわれており、日本では200万人とも推計されています。ずいぶんありふれた病気といえますが、診断されずに見過ごされている方がとても多いのが実態です。

 睡眠時無呼吸症群は、夜間の睡眠不足のため昼間に異常な眠気をもよおすために、いろいろな合併症をひき起こす病気ですが、交通事故を始め重大な産業事故の原因ともなって おります。1979年のスリーマイル島の原発事故や、1983年のチェルノブイリ原発事故も、睡眠時無呼吸症候群の従業員の居眠りが原因とされており、日本でも新幹線の運転手の居眠りが、最近大きな社会問題となりました。

1)いびきと睡眠時無呼吸の関係_

 いびきは、睡眠中に上気道が狭くなり、空気が通るときノドが振動して音が鳴るものです。いびきは肥満、アゴが小さい、扁桃腺が大きい、鼻づまりがある場合にかきやすいようです。いびきはノドが振動している状態ですが、ノドがさらに狭くなると、息を吸うときに気道の壁が吸い寄せられて閉じてしまい、息が吸えない状態になることがあります。これが無呼吸です。それが頻繁に起こり、様々な症状が引き起こされるのが睡眠時無呼吸症候群です。

 以前からいびきをかいていた人が、肥りだしてある時点から無呼吸を伴うことが多いようです。 無呼吸を伴ういびきは、いびきがしばらく止まり(平均30秒、長いときは2分以上)、その後あえぐような激しい息、またはいびきで呼吸が再開するのが特徴です。健康ないびきは規則的でこのような変動がありません。

 低呼吸のときのいびきは、無呼吸のように止まりませんが、やはり1~2分の周期でいびきが強くなったり、弱くなったり、いびきの性状が変動するのが特徴です。

 いびきのことは本人にはわからないので、周囲の人が指摘してあげることが大切です。無呼吸(10秒以上の呼吸の停止)が頻繁に(1時間に5回以上)起こり、昼間の眠気など様々な症状が引き起こされるのが 睡眠時無呼吸症候群です。その多くは、息を吸うときに気道の壁が吸い寄せられて閉じてしまい、息はしようとしているが吸えない状態になる閉塞性無呼吸です。息はかろうじて吸えているが、不十分である低呼吸も無呼吸と同様の症状を起こすといわれています。これらをまとめて睡眠時無呼吸低呼吸症候群といいます。

2)睡眠時無呼吸症候群の症状_

 よく窒息して死んでしまうのではと心配されますが、そのようなことは普通ありません。

 それは無呼吸が続くと脳が短時間目覚めて(覚醒反応:本人は覚えていない)、上気道を拡げる筋肉に指令を送り、息を吸えるようになるからです。 ただ、無呼吸から身を守る覚醒反応が一晩に数百回もおこるので、睡眠はとぎれとぎれの質の悪いものとなります。そのため、朝起きたとき頭が重く、昼間も眠気が強く、集中力がなくなります。このような状態では、交通事故の危険性も数倍高くなることが報告されています。

 なお単なる寝不足と異なる点は、寝つきは非常に良いこと、長い時間眠っても熟睡感がないことなどです。その他の症状として、夜間の尿量・回数が多くなること、夜間発汗が多いこと、寝相が悪いこと、性欲が低下することなどがしばしば見られます。

3)睡眠時無呼吸症候群の合併症_

 無呼吸のため酸欠状態になり、心臓や血管系に負担がかかり、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などを合併しやすくなります。これらの合併症には無呼吸と肥満の両方の要因が関係しています。睡眠時無呼吸症と交通事故の関係については多くの研究報告があり、無治療の睡眠時無呼吸症患者では交通事故の発生率が正常の数倍にのぼるが、CPAP治療をおこなうとほぼ完全に正常化することが多くの研究で証明されています。

4)睡眠時無呼吸症候群の診断_

無呼吸や低呼吸があるかどうか、睡眠時無呼吸症候群であるとすればどの程度であるかを調べる為に、睡眠ポリグラフ(ポリソムノグラフ)という検査を行います。これは睡眠時無呼吸症候群の診断と治療方針の決定、治療効果の確認などにおいて最も重要な検査です。この検査では睡眠の状態、呼吸の状態、イビキの状態、身体の酸素の状態、身体の向きなどを同時に記録し、それぞれの関係を調べます。その他に検査項目を少なくした簡易診断法があります。

5)睡眠時無呼吸症候群の治療_

a 鼻マスク式持続陽圧呼吸法(NCPAP) _

 睡眠中、息を吸おうとするときに咽頭部分が吸い寄せられてせまくなってしまい、息を吸おうとしても吸えない状態になるのが閉塞型無呼吸です。起きているときは咽頭を広げる筋肉がしっかり働いていて、息を吸ってもせまくなることはありませんが、眠ってしまうとこの筋肉の働きが弱くなるからです。

 このようにノドが狭くなるのを防ぐ最も確実な方法が鼻CPAP療法です。鼻マスクを装着して就寝します。鼻マスクには器械がつながっていて、空気が送りこまれ、ノドの内側から膨らませてつぶれないようにしています。この方法はほとんど100%の患者さんで有効であり、重症の患者さんでも健康な人と全く同様な快適な生活が送れるようになり、虚血性心臓病や脳血管障害による死亡を防ぐことができます

b 歯科装具(マウスピース)_

 歯科装具はボクシングで使うマウスピースのようなもので、下顎を前方に数mm突き出してかみ合わすようにするものです。これにより咽頭部が広がり、息の通りがよくなります。イビキも軽くなります。

 適応は一般的には中等症以下の睡眠時無呼吸症候群とされていますが、重症例でも鼻CPAPに劣らないほどの効果がある場合があります。

c 手術療法_

 扁桃肥大などがあり手術により狭窄が改善する場合に行われます。適切な症例を選択すれば根治する場合がありますが、有効率にばらつきがあるため、あまり普及はしていません。

d その他_

 側臥位での就寝、アルコール、睡眠薬の禁止、鼻閉の治療、体重減量などがあります。

この様に睡眠時無呼吸症候群は高血圧、不整脈、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病等の合併症を引き起こすばかりではなく、突然死の原因となっていることもわかっています。昼間の眠気のため交通事故や労働災害を引き起こすこともあり放置しておくと命に関わる病気です。いびきがひどく昼間でも眠気がひどい場合には睡眠時無呼吸症候群が疑われます。当院でも睡眠時無呼吸症候群の簡易検査、精密検査および治療が可能ですので、興味がある方は気軽に外来受付または内科外来までお問い合わせ下さい。